総務省の「令和2年版情報通信白書」によると、企業によるクラウドマイグレーションの割合は64.7%(令和元年度:58.7%)でした。このことからも、自社で物理的なサーバを保有して管理・運用するオンプレミス形態の環境から、クラウドマイグレーションする企業が増加傾向にあることが分かります。クラウドマイグレーションによって、クラウド環境に移行すれば、コストの大幅カットが見込めるといわれていますが、他にもさまざまなメリットがあります。本記事では、クラウドマイグレーションとオンプレミス環境との違いについて解説していきたいと思います。
クラウドマイグレーションとオンプレミス環境との違いについて
ここでは、クラウドマイグレーションとオンプレミス環境との違いについて解説しています。その前に、クラウドマイグレーションについて詳しくみていきましょう。
クラウドマイグレーションとは?
クラウドマイグレーションとは、自社内に設置した物理的なサーバで運用してきたシステムを、外部の事業者のクラウド環境のサービスでのシステム運用に切り替えることです。和訳すると、「クラウド化」「クラウド移行」といった意味です。
クラウド環境とは、従来、個々のストレージや自社の物理サーバに保存していたデータを、外部の一ヵ所で集約・管理し、必要なときにインターネットを経由して利用できる環境のことで、そのクラウド環境を提供しているサービスのことを総称して、「クラウドサービス」と呼んでいます。クラウドサービスは、利用者が場所を選ばずどの端末からでも利用することができることから、数年前から需要が高まっています。そして、このような社会的背景から、企業のクラウドマイグレーションへの移行が進む傾向にあるということがいえます。
オンプレミス環境との違いは?
もともと、大手企業を中心に導入が進んできたオンプレミス環境。オンプレミス環境とは、自社内に設置したサーバ-や情報システム設備で、社内のさまざまなシステムを運用する環境のこと。和訳するとは、「自社運用」という意味です。それでは、企業が導入するクラウドマイグレーションとオンプレミス環境には、どのような違いがあるのでしょうか。クラウドマイグレーションとオンプレミス環境との比較項目として、下記の5つを挙げることができます。
- 品質
- コスト
- 調達スピード
- カスタマイズ性
- セキュリティ面
この5つの項目を下表にまとめてみました。
|
クラウドマイグレーション |
オンプレミス環境 |
品質 |
オンプレミス環境に比べて通信速度が劣る |
通信速度は速く、安定している |
コスト |
基本、月額利用料以外の費用がかからない |
初期導入費や維持・管理費など、さまざまな費用がかかる |
調達スピード |
即日の利用開始が可能 |
利用できるまでに時間がかかる |
カスタマイズ性 |
自由にカスタマイズできない |
自由にカスタマイズが可能 |
セキュリティ面 |
自社での対策は必要ない |
自社で対策が必要となる |
<品質>
5G化などにより通信速度は年々向上しています。しかし、クラウドマイグレーションでは、ネットワークを介して離れたところにあるサーバへアクセスするため、回線の速度と質は安定していません。一方、オンプレミス環境は社内のネットワークを利用しているため、回線の速度と質が安定しています。ただし、オンプレミス環境の品質は、サーバ・システムを構築したエンジニアのスキルによって差異が生じます。
<コスト>
自社内に物理サーバを設置してシステムを運用するためには、必要となる機器の購入費や設置に関する工事費など、さまざまな初期費用がかかります。また、運用や管理にもコストがかかり、拡張となれば新たな購入費や工事費などが必要です。しかし、クラウドマイグレーションを導入すれば、自社でサーバー環境を保有する必要がないため、初期費用だけでなく、運用・管理に必要となる費用を大幅に抑えることができます。ただし、利用するサービスによっては月額利用料は利用した従量によって変動することがあります。そのため、月額費用が固定されるオンプレミス環境と比べて予算化が難しい場合もあります。
<調達スピード>
必要となる機器の購入や工事が必要になり、設置しても調整しなければ運用がスタートできないのがオンプレミス環境です。そのため、調達・導入・運用には相当な時間がかかります。クラウド環境はオンプレミス環境と比べてすぐに使用可能であることが特徴です。自社のシステムにマッチングするための調整時間は必要ですが、サーバ構築を自社内で行わないため、調達スピードはクラウドマイグレーションの方が圧倒的にスピーディーです。
<カスタマイズ性>
クラウドマイグレーションするデメリットとして、システムのカスタマイズが行いにくいことが挙げられます。一方、オンプレミス環境は、自社でサーバー・システムを管理・運用しているため自由にカスタマイズすることが可能です。しかし、クラウドマイグレーションをは、契約した他社が提供しているサービスを活用しているため、システム環境を自由に変更・カスタマイズすることは困難です。ただし、リソース面でのカスタマイズは可能なサービスが多く、リソースのカスタマイズ性でいえば、オンプレミス環境よりも優れています。
<セキュリティ面>
企業を狙った新たなサイバー攻撃の手法は年々増加しています。オンプレミス環境では、障害が起きたり、サイバー攻撃を受けた場合、自らでWebセキュリティ対策をしなければなりません。しかし、クラウドマイグレーションは提供する会社が基本的なWebセキュリティ対策を行うため、コストをかけずにセキュリティ対策を取ることは大きなメリットといえます。ただし、外部とのネットワークを利用するクラウドマイグレーションは、外部からのハッキングや情報漏れなどのリスクは高くなるため、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)等を導入しセキュリティを更に強固にする必要もあります。
企業がクラウドマイグレーションに移行する3つのメリットとは?
次に、企業がクラウドマイグレーションに移行する3つのメリットについて解説します。
<低コストで導入可能>
一般的に、オンプレミス環境でシステム運用する場合は、下記のような費用がかかります。
- サーバーの設置費
- 付帯設備費
- ハードウェアやソフトウェアの購入費
- ライセンスの購入費
- システムの維持・管理費
これらの費用は、場合によっては数千万円かかることもあり、企業運営にとって大きな課題でした。しかし、クラウドマイグレーションであれば、これらのコスト削減が可能です。さらに、システム運用や維持・管理のために、エンジニアなどの専門家を雇う必要もなくなるため、人件費も抑えることができます。
<障害時にかかる復旧が容易>
どんなに慎重にシステム管理していても、突然何らかの原因でシステムに障害が発生する危険性はあります。もし、オンプレミス環境で運営していれば、障害が発生した場合自らで対応しなければなりません。社内に専門チームがあればすぐに復旧できますが、そうでなければ復旧には相当な時間を要します。
それに対してクラウドマイグレーションは、障害への対応は基本的に提供会社が行います。しかも、専門的な知識を持つ運用スタッフが対応するため、短時間で復旧することは大きなメリットといえるでしょう。
また、障害時にサーバが破損して、会社の大切なデータが失われてしまうリスクも軽減できます。
<屈強なセキュリティ>
クラウドマイグレーションでは、経済産業省の「クラウドセキュリティガイドライン」をベースに、情報セキュリティ管理・対策を行っています。経済産業省が策定した「クラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドライン」の通称で、クラウドという概念が広まった当初、運用にあたっての明確なルールは存在せず、多くの顧客情報や社外秘とされる情報が流出する危険性がありました。この問題に対処するべく策定され、発生した事例に対応できるように制定されたルールが「クラウドセキュリティガイドライン」です。詳細を見ると、企業のクラウドマイグレーション運用において、クラウドセキュリティガイドラインに則ってWebセキュリティ管理を行っているため、安心して利用できるということです。
ちなみに、クラウドマイグレーション事業者が適切なデータ保護やセキュリティ対策を実施していることをマークとして表示する制度もあります。実績のある会社のクラウドマイグレーションであれば、屈強なWebセキュリティ対策も可能でしょう。
しかし、クラウドを導入するにあたって、注意しなければならないこともあります。IaaS、PaaS、SaaSなど種類によって違いますが、ユーザ側にもセキュリティ面での責任はあります。例えば、SaaSの場合、クラウド上のデータ管理についてはユーザの責任範囲であることが一般的です。
だからこそ、オンプレミス環境であっても、そしてクラウド環境であっても、ユーザ自らセキュリティに対して徹底的な検討を行い、どのようなセキュリティ対策を導入するかを決定していくことが求められます。
詳しい内容は下の記事を参考してください。
https://www.cloudbric.jp/blog/2021/03/cloud_security_u_must_know/
さいごに
今回は、企業におけるクラウドマイグレーションをテーマに解説してきました。クラウドマイグレーションには、コスト面やセキュリティ面など、多くのメリットがあるため導入を検討している企業も増加傾向にあります。しかし、すべての面でクラウドマイグレーションがオンプレミス環境より優れているということではありません。
例えば、オンプレミス環境で利用できていたシステムが、クラウド環境にしたら利用できないこともあります。また、トラブルが発生したりするなど、クラウドマイグレーションに移行したことによって、既存システムとの連携が困難となるケースも報告されてます。
そして、十分な検討なく短期間でクラウド移行を進めることによって外部からのハッキング等に十分に対策を取っていない状況でセキュリティ事故が起きたりするケースもあります。
そのため、企業でのクラウドマイグレーション導入は、セキュリティ対策を含めて、慎重に検討しましょう。
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https://www.cloudbric.jp/cloudbric-waf/
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