近年、ますます巧妙化・多様化するサイバー攻撃のひとつに、リバースブルートフォース攻撃と呼ばれる手法があります。従来のセキュリティ対策では防ぐのが難しいこの攻撃は、企業や個人にとって大きな脅威となっています。
本記事では、リバースブルートフォース攻撃における基本的な仕組みや特徴、そして攻撃を未然に防ぐための有効な対策を詳しく解説します。
リバースブルートフォース攻撃とは
リバースブルートフォース攻撃は、不正アクセスの中でも独特なサイバー攻撃の手法のひとつです。この攻撃では、特定のパスワードを固定し、それに対して多数のユーザーIDでの不正ログインを試行します。
この攻撃が危険視される理由のひとつは、不特定多数のアカウントを対象としている点です。パスワードに対するIDとの組み合わせを幅広く試行することで、検出や防御が難しくなります。複数回のログイン失敗でアカウントがロックされるような一般的なセキュリティ対策では、この攻撃を完全に防ぐのは困難です。そのため、より高度なセキュリティ対策が求められています。
ブルートフォース攻撃・パスワードスプレーとの違い
リバースブルートフォース攻撃は、ブルートフォース攻撃やパスワードスプレー攻撃と比較されることがあります。各手法は似ているようで目的やアプローチが異なるため、以下でそれぞれの違いを詳しく解説します。
・ブルートフォース攻撃との違い
ブルートフォース攻撃は、リバースブルートフォース攻撃と異なり、固定されたユーザーID(またはユーザー名)に対して、可能性のある全てのパスワードを試行する手法です。例えば、特定のメールアドレスに対して「123456」や「password」など、広く使用される可能性のあるパスワードを総当たりで入力して、不正ログインを試みます。
一方、リバースブルートフォース攻撃は、逆(リバース)のアプローチです。パスワードを固定し、それに対応するユーザーIDを試行するため、不特定多数のアカウントへの侵入を目指す攻撃手法として特徴づけられます。
・パスワードスプレーとの違い
パスワードスプレー攻撃は、リバースブルートフォース攻撃とも一部似ているものの、目的や手法は異なります。この攻撃では、多数のIDに対して同じパスワードを少数ずつ試行する方法を取ります。例えば、「password123」というパスワードを広範なアカウントに試し、その後一定時間待機して別のパスワードで再度試行する形です。短期間に多数の試行をしないのは、セキュリティシステムによるアラートやロックを回避することが目的です。
リバースブルートフォース攻撃の仕組み
以下では、リバースブルートフォース攻撃の具体的な仕組みを解説します。
・1. 攻撃に使うパスワードを決定する
第1段階は、攻撃に使用するパスワードの選定作業です。ここで狙われるのは、多くのユーザーが使用している可能性の高い、簡単なパスワードです。
例えば、「123456」や「password」といったパスワードは、シンプルで覚えやすいため多くのユーザーが使用していると考えられており、攻撃者はこれらのパスワードを優先的に使用する傾向があります。また、攻撃者が「辞書攻撃」と呼ばれる手法を利用することもあります。この手法では、辞書データベースに登録されている一般的な単語やフレーズを用いて、攻撃に適したパスワードを抽出します。過去のデータ漏えい事件や公開された情報をもとに、実際に使用されているパスワードリストが作成されることもあるため、ユーザー側にも注意が必要です。
・2. ユーザーIDを総当たりでログイン試行する
パスワードが決定された後、次になされるのが固定したパスワードによる、複数のユーザーID(アカウント名)へのログインの試行です。この段階では、攻撃者は公開されている情報や過去に流出したデータから入手した大量のユーザーID候補を用います。
例えば、SNSやインターネット上に公開されているユーザー名やメールアドレス、過去のデータ漏えい時に収集したID情報などが利用されるケースがあります。これらを使い、攻撃者は特定のパスワードで総当たり的にログインを試行します。
この作業は手動で行われることは少なく、自動化ツールを用いて効率的に進められることが一般的です。大量のアカウントに対して短時間で攻撃を実行することが可能なため、一部でもセキュリティが脆弱なアカウントが存在すれば、攻撃が成功する確率が高まります。
リバースブルートフォース攻撃の有効な対策
リバースブルートフォース攻撃は、従来のセキュリティ対策だけでは防ぐのが難しいため、複数の対策を組み合わせることで、より効果的な防御が可能です。以下では、有効性の高い対策を具体的に解説します。
・長くて複雑なパスワードを使用する
最初に取り組むべき対策は、長くて複雑なパスワードを使用することです。パスワードは、英大文字・小文字、数字、記号を組み合わせた12文字以上のものが推奨されます。このような複雑なパスワードを設定することで、攻撃者が試行できるパスワードの組み合わせが膨大になり、攻撃の成功率を大幅に下げられます。
また、攻撃者がよく使用する簡単なパスワード(例:「123456」「password」など)を避けることで、リスクをさらに減らせます。特に注意すべき点は、複数のサービスで同じパスワードを使い回さないことです。ひとつのサービスで情報が漏えいした場合、他のサービスでも同じパスワードを使って不正アクセスが行われる可能性が高まるため、サービスごとに異なるパスワードを設定することが重要です。
・多要素認証を活用する
多要素認証(MFA)は、リバースブルートフォース攻撃を防ぐうえで非常に有効な手段です。この認証方式では、IDとパスワードのほか、追加の認証要素を要求します。スマートフォンに送信される1回限りのコード(ワンタイムパスワード)や、生体認証(指紋や顔認証)などが代表例です。
多要素認証を導入しておくことで、攻撃者が仮に正しいIDとパスワードの組み合わせを見つけたとしても、追加の認証要素に阻まれてログインは成功しません。さらに、生体認証や物理トークンなど、より高度な認証方式を採用することでセキュリティを強化することが可能です。
・パスワードマネージャーを利用する
パスワードマネージャーを活用することで、より安全かつ効率的にパスワードを管理できます。このツールは、英大文字・小文字、数字、記号を含む強力なパスワードを自動生成し、それを安全に保存します。そのため、ユーザーは複雑なパスワードを覚える必要がなくなり、それぞれのアカウントに異なるパスワードを設定することが可能です。
さらに、いくつかのパスワードマネージャーには、ダークウェブモニタリング機能が搭載されており、自身の情報が漏えいしていないか定期的に確認できることも利点です。
・セキュリティ対策ツールを導入する
最後に、セキュリティ対策ツールの導入により、リバースブルートフォース攻撃のリスクを大きく下げることが可能です。これらのツールは、短期間での大量のログイン試行や異常な挙動を監視し、不正アクセスの兆候を早期に発見します。例えば、不審な動きが検出されると、自動的にIPアドレスをブロックしたり、管理者に通知を送ったりする機能を備えています。
特に「Cloudbric WAF+」のような企業向けのセキュリティサービスは、専門知識がなくても簡単に導入・運用できるため、どのような企業にも適しています。
まとめ
リバースブルートフォース攻撃は、固定のパスワードを用いて多数のユーザーIDを試行するというサイバー攻撃です。この攻撃は、従来のセキュリティ対策だけでは防ぎきれない場合があり、特に不特定多数のアカウントを狙うため、リスクが広範囲に及ぶ点が特徴です。
有効な対策としては、長くて複雑なパスワードの設定のほか、多要素認証の導入、パスワードマネージャーの活用、セキュリティ対策ツールの利用が挙げられます。
サイバー攻撃が日々高度化している現代では、個人と企業の双方がセキュリティ意識を高め、継続的に対策を強化することが重要です。Cloudbric WAF+ のようなツールを活用しながら、オンライン環境の安全性を確保する取り組みを進めていきましょう。